緑内障と急性緑内障発作:視力を守るために知っておきたいこと
緑内障は、視神経がダメージを受けることで視野が徐々に狭くなる「静かに進行する病気」です。 特に初期段階では自覚症状がほとんどなく、日本人に多い「正常眼圧緑内障」は眼圧が正常でも発症します。定期検診と早期発見が視力を守る最善策です。このページでは、緑内障についてわかりやすく解説します。
緑内障とは?
緑内障は、視神経がダメージを受けることで視野が狭くなる病気です。一度進行してしまうと、失われた視野は元に戻りません。適切な治療を行わなければ失明に至ることもあるため、早期発見が重要です。
なぜ自覚しづらいのか
● 視神経の欠損なので、痛み、充血などの「症状」がない
● 左右の目が互いに補完するため、視野欠損に気づきにくい
● 視力低下・視野欠損は緑内障が進行した最終段階で現れることが多い
緑内障が気づきにくい理由(視野欠損の状態)
※右目と左目ともに緑内障があり、違う部分に視野欠損がみられる場合の見え方(イメージ)




左右の眼で補完され、視野欠損に気づきにくい
日本人と緑内障
日本人には緑内障が特に多く見られます。以下のようなデータがあります:
- 40歳以上の約5%、つまり20人に1人が緑内障を患っている
- 日本では緑内障患者の約70%が「正常眼圧緑内障」に分類される
- 緑内障は失明原因の第1位
日本人に多い「正常眼圧緑内障」
日本人に多い「正常眼圧緑内障」は、眼圧が正常範囲内でも視神経がダメージを受ける病気です。眼圧測定だけでは発見が難しい場合があるため、視神経や視野の検査が重要です。
緑内障の原因
緑内障は視神経がダメージを受け、視野が狭くなる病気です。原因は完全には解明されていませんが、以下の要因が関与するとされています:
- 高眼圧:目の中の圧力(眼圧)の上昇が視神経を圧迫。
- 遺伝:家族に緑内障の患者がいる場合、発症リスクが高い。
- 加齢:40歳以上でリスクが増加。
- 強度の近視:目の構造が視神経に影響を与える。
- その他の病状:糖尿病、高血圧、ステロイド薬の長期使用など。
特に日本人に多い「正常眼圧緑内障」では、眼圧が正常でも視神経が傷つくケースがあり、血流の低下や視神経の脆弱性が関係すると考えられています。
家族歴(血縁のある親族に緑内障の方がいる場合)や上記のリスク要因がある方は、定期的な眼科検診が推奨されます。
緑内障の種類
緑内障は、隅角(房水の流れが通る出口)の状態や眼圧の変化などにより、いくつかのタイプに分類されます。それぞれの特徴を理解し、適切な診断・治療を受けることが重要です。

1. 開放隅角緑内障
開放隅角緑内障は、日本人を含む多くの人に見られる緑内障の代表的なタイプです。以下の特徴があります:
- 隅角(房水の出口)が正常に開いているが、房水の排出がスムーズに行われず眼圧が上昇
- 進行が緩やかで、初期段階では自覚症状がほとんどない
- 40歳以上で発症することが多い
- 近視の人に多い傾向がある
このタイプでは、定期的な眼底検査や眼圧検査による早期発見が重要です。
2. 正常眼圧緑内障
正常眼圧緑内障は、開放隅角緑内障の一種で、眼圧が正常範囲内(一般的に10〜21mmHg)でも視神経がダメージを受けるタイプです。以下の特徴があります:
- 日本人に特に多く見られる(国内緑内障患者の約70%が該当)
- 視神経への血流不足や近視が原因の一部と考えられる
- 眼圧測定だけでは発見が難しいため、視野検査や眼底検査が必要
症状が進行する前に、定期的な検診を受けることが予防の鍵です。
3. 閉塞隅角緑内障
閉塞隅角緑内障は、隅角が狭くなることで房水の流れが遮断され、眼圧が上昇しやすいタイプです。以下の特徴があります:
- 急性緑内障発作を引き起こすリスクがある
- 40歳以上の女性や遠視の人が特にリスクが高い
- 急性緑内障発作時には激しい目の痛み、視力低下、吐き気や嘔吐が現れる
現在では、急性緑内障発作の予防として白内障手術が広く用いられ、水晶体より薄い眼内レンズを挿入し狭隅角を解除することで房水の流れを改善し、眼圧を安定させることが多いです。また、急性緑内障発作は、急激に眼圧が上がり失明につながる緊急事態ですので、起こった場合は、速やかに眼科を受診する必要があります。
4. 続発緑内障
続発緑内障は、他の目の病気や外傷が原因で発症するタイプです。主な原因には以下が挙げられます:
- ぶどう膜炎などの目の炎症
- 糖尿病網膜症
- ステロイド薬の長期使用 など
原因を特定し、それに応じた治療を行うことが重要です。
急性緑内障発作とは?
急性緑内障発作は、眼圧が急激に上昇することで視神経に大きなダメージを与える緊急事態です。適切な対応が遅れると数日で失明に至る可能性があるため、迅速な診断と治療が不可欠です。
主な症状
急性緑内障発作の際には、以下の症状が急激に現れることがあります:
- 目の激痛
- 視界のかすみ(霧がかかったような視界)
- 頭痛、吐き気、嘔吐
これらの症状が見られた場合は、速やかに眼科を受診してください。特に頭痛や吐き気が強い場合、内科や脳外科を受診してしまい、眼科の診断が遅れることがあるため注意が必要です。
原因
急性緑内障発作は、隅角が閉塞することで房水の流れが遮断され、眼圧が急激に上昇することが直接の原因です。以下の要因が発症に関係しています:
- 狭隅角(浅前房):角膜と虹彩の距離が近く、隅角が狭い目の形状の方がリスクが高い
- 白内障:加齢による水晶体の肥厚により隅角がさらに狭くなる
特に、狭隅角(浅前房)の方は、隅角が物理的に狭いため、房水の流れが遮断されやすく、急性緑内障発作を起こすリスクが高いとされています。

急性緑内障発作の原因
リスク要因
急性緑内障発作を起こしやすい方には以下の特徴があります:
- 40歳以上の女性
- 遠視のある方
- 家族に同じ病気になった人がいる方(緑内障は遺伝的な要因が関係する場合があります)
- 狭隅角(浅前房)の目の形状を持つ方
治療と予防
急性緑内障発作は迅速な治療が必要です。主な治療法としては以下のものがあります:
- 眼圧を下げる緊急治療:点眼薬や内服薬、静脈注射などを用いて眼圧を速やかに低下させます。
- 根本治療(予防):隅角を広げるための白内障手術が広く用いられます。この治療法は、角膜へのダメージを軽減しつつ再発リスクを大幅に低減します。
特に、狭隅角の方にとって白内障手術は、急性緑内障発作の予防にも非常に有効とされています。水晶体を取り除くことで隅角が広がり、房水の流れが改善するため、発作のリスクを大幅に下げることができます。
その他にも以下の取り組みが早期発見・対策につながります:
- 親族に緑内障や急性緑内障発作を経験した方がいる場合は、早めに眼科で検査を受ける
- 狭隅角や白内障がある場合、定期的な検診を受ける
- 視力の変化や目の違和感を感じたら速やかに受診する
急性緑内障発作は突発的に発症するため、早期発見と定期検診が視力低下・失明予防のカギとなります。
緑内障の予防と治療
緑内障は、視神経が徐々に傷つくことで視野が狭くなる病気です。一度進行した視野欠損は元に戻らないため、早期発見と適切な治療により、視野や視覚に異常が出る前に視神経のダメージを緩やかにすることが重要です。
早期発見の重要性
緑内障は初期段階で自覚症状がほとんどありません。定期的な眼科検診により、視野や視覚に異常が出る前に視神経の異常を発見することができます。特に以下の条件に該当する方は、40歳を超えたら年1回以上の検診を受けることが推奨されます:
- 家族に緑内障の患者がいる
- 強度近視または遠視がある
- 高血圧や糖尿病を患っている
検診では眼圧測定だけでなく、視神経や網膜の状態を確認する眼底検査や、視野欠損の早期発見に役立つ視野検査が重要です。
治療
緑内障の治療は、視神経のダメージ進行を抑えることを目的に、眼圧を下げる治療が中心です。以下の方法が用いられます:
1. 点眼薬治療
最も一般的な治療法で、眼圧を下げるために日常的に使用されます。
2. その他の治療法
眼圧を下げるために、レーザーや手術が行われる場合があります。
治療の指標
治療の進行状況や効果を判断するため、以下の検査が定期的に行われます:
- 眼圧検査:視野や視神経の状態と眼圧を比較しながら治療管理します。
- 視野検査:視野欠損の有無や進行具合を確認します。
- 眼底検査:視神経や網膜の状態を詳細に調べます。
- OCT画像検査:視野異常が出る前に視神経や網膜の異常を検出できます。
ステロイド薬の影響
ステロイド薬を長期間使用することで眼圧が上昇し、緑内障のリスクが高まる場合があります。これに該当する方は、眼科医と相談の上、定期的な検診を受けることが重要です。
緑内障は治療を中断すると再び進行する可能性があるため、継続的な管理が不可欠です。視力を守るためには、早期発見と適切な治療を心がけましょう。
まとめ:緑内障を早期に発見する重要性
緑内障は、初期には症状がほとんどなく、気づいたときには進行している場合が多い病気です。一度失われた視野は戻らないため、早期発見と適切な治療が視力を守るカギとなります。
- 40歳以上や家族に緑内障の方がいる場合は、定期的な検診を受けましょう。
- 目の違和感や視力の変化を感じたら、早めに眼科を受診してください。
- 処方された点眼薬を正しく使い、治療を続けることが大切です。
緑内障は、正しい知識と早期対応で進行を遅らせることができます。「気になる症状がなくても、検診を」が視力を守る第一歩です。